バイリンガル

★ミステリの感想なのでネタバレの可能性ありです★

バイリンガル

バイリンガル

主人公聡子はアメリカで結婚していましたが、離婚して、息子と日本で暮らすようになります。それから20年ぐらいたち、英語教師になった息子のところに、沢田仁奈という女性が現れます。彼女は、30年前にアメリカに起こった誘拐事件の被害者で、聡子もその事件の関係者でした。。。
 
島田荘司が、身辺雑記的な表現力を、このフィールドにはいない的にほめているけれど、女性同士の観察とか関係の描写とかうまい人っていろいろいるような気が。
そしてなんとなくこの主人公に好感を持てないのよね。。。例えば島田荘司も書いてたけど、(初期で)ニーナのことは見下しているのに涼子のことは擁護しているとかそういう辺りもあるし、あと単になんとなく語り口があまり好きになれないというところもある。だから読んでて楽しいのだか楽しくないのだか。
前半は、その身辺雑記的な表現が延々あって冗長な気が。でようやくアメリカ時代の話になるんだけど、また前提として日本人会の話、醤油会社の話、専門の発音の話とか教授戦の話とかがあって・・・と、肝心の誘拐事件がなかなか起こらない。起こったら起こったで今度は記憶で話してる割にめちゃめちゃ具体的で長いし。まじめだなーと思うけど、全体がもうちょっとスピーディーだといいな。
あと、事の真相を解明する会話がなんかわかりにくいんだよね。なんか説明がうまくないというか、それさっきから言ってるじゃんみたいなことに初めて聞くような反応をしたりして、実際の会話としてはあることだろうけど、読んでいると流れが悪く感じます。
それから「バイリンガル」ということで入れたのかもしれないけど、そこ日本語でいーじゃんとか、そこであえて日本語使うのなぜだみたいな無理矢理感のあるところもありました。
犯人が誘拐した子に自分の名前教えるという謎のくだりもあったな。小さい子だから油断したのかな。それにしてもと思うけれど。
コツコツコツコツ読み続けていくと最後にようやくミステリーらしき楽しさを感じられます。トリック自体は前半から説明されているようなものなので驚きはないですが、それで新たな真相が分かったのでよいなと。しかし後ろに付いている島田さんの言葉を読むと、受賞後にかなり大きく修正したようで、そしてそれがその、この話の肝的なところ(いったん解決した事件が新たな真相を見せる)のようなので、とすると修正前の話って一体何だったのだろう??という別の興味もわきますが、そちらは読みたくはならないです。