Story Seller 3 さだまさし「片恋」

見知らぬ人が交通事故で亡くなり、その人の持っていたものが自分の名前と携帯番号のメモだけだった、というミステリーでひっぱりつつ、報道するという自分の仕事についての葛藤があり、その謎の件で出会った刑事さんとの恋も予感させ、といった感じで結構盛りだくさんなのですが・・・。
まず主人公の一人称が「ワタシ」なのがすごく苦手・・・単なる好みの問題かもしれないけど、「私」や「わたし」ならプレーンな気持ちで読めるんだけど、「ワタシ」を使われると、例えば自己の存在自体に不安があるとか疑問があるとか無機質感を強調したいとか、なにか特別な意味がこめられているような気がして気になってしまう。まぁ今回もワタシの仕事って何だろうとかワタシってどんな人間なんだろう的なお話でもあるので自分に対する問いっちゃ問いなんだけどそれはまたちょっと違う段階の問いだと思うので。あと「ワタシ」って使ってる女の人そんなにいるかな?ていうのもあって。違和感。
あとはテーマがそのまま前面に出すぎているなと思いました。でもその割に、自分がコツコツ取材してきたものが今日は別の大事件のニュースで報じられなくなってしまっただろうなというときの感想が「いやワタシの仕事のことなんていい」しかなくて、結局その取材も伝えるべきことがあるという気持ちからではなくて自分の仕事、実績としかとらえていないのかなーて感じで、なんだか悩みが本当っぽくなく感じてしまいました。
それから、1人暮らしの女性だと用心深くなるとかいって最初エピソードをあげていたのに後半では電話の相手が名乗っていないのにこちらの名前を明かしたりして細かいところが雑なように感じたし、「電話でぶっきらぼうな応対をして悪かったかも・・・」と思ったら次の日には見も知らぬ相手の職場に仕事中菓子折持参で謝罪に行くとか展開が不自然で強引だし、文章も好みでないし、読んでいて各所で流れが悪く感じたし、よい印象を受けるところがないままに読み終わってしまいました。