アルキメデスは手を汚さない 小峰元

アルキメデスは手を汚さない (講談社文庫)

アルキメデスは手を汚さない (講談社文庫)

これ有名だよなーと思って購入しました。青春ミステリ好きだし。
女子高校生のお葬式から始まるんだけど、その話で行くのかなーと思ったら違った話がでてきたりして、あらら何の話なの?というあたりはおもしろかったです。
が、終わってみると・・・あとがき読んだら、一本筋の通った魅力的な少年たちの物語、みたいなことなの?て感じでしたし、作中で野村刑事も、理解しがたい世代ながらこいつはカッコイイ的な感想にたどり着いていましたが、何がカッコイイのか・・・むしろ不快感。
あとがきの、ミステリ部分が弱いという指摘には同意・・・。
乱歩賞作品の中でもめっちゃ売れてるそうですが、そこまでの人気の訳がわかりませんでした。
田中君の部分はなかなかおもしろかったです。
が、その他の面々のポリシーがよく分からなかったのです。


以下ネタバレ

納得いかないことをうやむやにしないでガンガン実力行使していこうぜみたいな主張はわかるとして。
その基本にあるはずの、彼らなりの善悪やOK/NGの基準が分からなかった。
日差しを遮られて暗いところで死んでいったおばあちゃんを思う心があるのなら、復讐しようという正義は分かるとしても、その復讐の手だての結果としてのみ誕生して産まれることもなく殺される胎児の存在への思いが微塵もないようなのは何故なのか。
自分たちの計画に賛同してくれた友達なのに、いざ実行となると相手に知らせずに睡眠薬を使用して、そもそもの計画の目的とは関係ない自分たちの勝手な欲望や都合まで満足させようとする内藤も柳生も気持ちが悪かった。何故そんな不確実な方法を実行しようとしたのかもわからないし・・・いや延命は邪魔な美雪を汚してやろうという企み、内藤は好きな美雪と関係を持ちたいという欲望だから分かるか分からないかで言えばわかるんだけど、このお話のヒーローであるらしき柳生は、美雪としたいわけではなかったのなら、何を考えてこんな計画に賛成していたのか。
美雪が協力してくれるというのなら、実際に妊娠させなくても「妊娠した」と父親に告げさせればそれだけで父親を苦しめるという目的は達成されるわけで。それにわざわざ琵琶湖に旅行に行くとかゴチャゴチャ準備してたけど1度で妊娠するかも分からんわけで、妊娠しなかったらするまで同じような工作をしようとしていたのかな。
内藤に警告するためヒ素を弁当に盛ったが内藤が所用で呼び出されて食べられなくなった。なら別の日に再度実行すればいいのに、「おまえの弁当にはヒ素が入っていたんだよ」ということを示すために自分で食べてみせるという行動も意味わからんかった。
姉の不倫相手をとっちめるために、修学旅行の途中で抜けてきて自分ちでいちゃいちゃしてるはずの相手を奇襲してびびらせる、ていう計画もよくわからんかった。バレずに夜中に修学旅行を抜けて自力で四国まで行って夜明けにまた合流するなんてすごい労力を使ってまで奇襲せんでもいいんじゃないのと思う。最初から殺意があったのなら殺人を隠蔽するためにそれぐらいの労力をかけるかもしれないけど、ただ殴ってびびらせるためだけにどんだけの手間かけるのっていう。
総合すると、カッコイイとか悪いとかいう問題よりも先に、柳生ってとりあえずバカなんじゃないかなって思いました。
あとアルキメデス役を演じるためにマジ全裸になるというエピソードは必要だったのか。
なんかいろいろ無理くりな話でついていけないというかついていきたくないと思いました。