少女たちの羅針盤 水生大海

少女たちの羅針盤

少女たちの羅針盤

地元の文学賞受賞作だし島田荘司さんが選考してるしミステリーだし、ということでいつか読もうとは思っていたんですが、なんとなくペンネームが好みじゃなくて(ほんと好みだけの問題です…)、あとタイトルももうひとつだなぁとなんとなく思ってて、そんなこんなでずるずると映画公開の時期まで来ましたのでようやく読みました。
タイトルが今一つと言いましたが、応募時のタイトルが「罪人いずくにか」だったことを知り、「少女たちの羅針盤」になってよかったなぁと思いました。「罪人いずくにか」じゃ汎用性高すぎるよね…
過去のお話と現在のお話の2本立てになっていて、1章ずつ交互に進んでいく構成です。過去のお話は、4人の女子高生が羅針盤という劇団を結成し、活動をして、そしてその中の一人が亡くなってしまうというところまで。現在は、その一人を殺した犯人が主人公です。整形し、芸名を名乗って女優活動に取り組む主人公に、過去の罪を知っている者?からのメッセージ?がじわじわと…って感じです。2つのお話の描写を突き合わせながら誰が誰を殺したのか考えていくんですが、トリックを見破るぜ!という楽しみだけでなく、色々な被害者加害者の組み合わせを考えることで「過去」から「現在」までのお話を自分で何通りも想像することができるので、読んでいる間が楽しい作品でした。一気にガッツリ読むのもいいかもしれないけど、ちょっとずつ読んで、間に色々空想するのがおすすめです。
でも推理(ってゆるーくですが…)するときに映画のキャストのこと考えちゃって(誰が誰役担当ってのはまだ知らないんですけど)…「読んでるとこの人っぽいけど、でもそうすると映画の方が云々…てことは違うのかなー…」みたいな。やはり映画化の前に読んだ方がより純粋に楽しめたかなと。でも読み終えた今、じゃあ映画ではどうなってるのかなっていうのは知りたいので、映画への意欲を高めるという点ではよかったかも。
4人の少女がそれぞれ個性があって魅力的だし、それぞれの性格や心理、お互いの関係性などの描写も良かったと思うのですが、後半、ちょーっとその設定はご都合主義ではないかなーと思うところが数ヶ所あって、リアリティのレベルが作品の中で統一されていないような感じを受けまして。少女たちも、いきなり、つじつま合わせただけの薄っぺらい存在になってしまった感じがあって。そこが少し残念かなーと。