ガーディアン 石持浅海

ガーディアン (光文社文庫)

ガーディアン (光文社文庫)

イマイチ。
勅使河原冴の章は納得いかないし、栗原円の章はだるい。
以下ネタバレ
事故で死んだ場合と自殺で死んだ場合での周囲の人の心象の違い(例えばその人が死んだことによって仕事を多くこなさなければならなくなった人が、事故の場合ならば「しょうがない、あいつもかわいそうだ」と思うのにたいして自殺だったら「あいつの身勝手のおかげで自分がこんな苦労を」と思う、みたいなこと。らしい。そんなんケースバイケースって気もしますが)とか考えて自殺に踏み切れない人が、あんなタイミングであんな風に自殺するわけないと思う。
うまいこと事故に見える自殺の仕方を発見したから決行したい、でもその前にこの方法でほんとにいけるのかちょっと確認しよう、ここまではよいです。
まず前提として、勅使河原さんにはガーディアンがついていて、彼女に危機が迫るとガーディアンが発動し、危機を排除します。例えば空き缶が突風で飛んで来たら、彼女に当たる前にはじき返されます。また、他人が悪意をもって勅使河原さんに危害を加えようとすると、これまたガーディアンによって報復されます。例えば勅使河原さんに痴漢をはたらいた男は指の骨を全部折られました。(ちなみにガーディアンが発動する際、勅使河原さんは小指のうずき(でしたっけ)を感じ、ガーディアンの仕業であることを知ることができます。)
なので自分が勅使河原さんを殺そうとしても、勅使河原さんは無事、かつ、自分はガーディアンによって自動的に殺され、自殺には見えない形で死ぬことができるのではないかと。原田さんの考えはこんな感じですね。
でもほんとにガーディアンが存在するのか、決行の前にもう一度確かめたい。そこで仕事仲間のまゆまゆに(しかし「まゆまゆ」て…)勅使河原さんを転ばせてみてほしいと頼むわけです。が。
何故、彼女になりかけ、みたいな仲の女の子に、(彼女はそのつもりはなかったとはいえ)自殺の手伝いを頼むのか。死後の自分の評判は気にするけど、彼女が彼の死の手助けをしてしまったと自分を責めるのは問題なし?
しかもガーディアンの効果のテストの方法が「地下鉄の階段を下りているときにちょっと転ばせてみる」という危険極まりない方法。数段ならまだしも、わざわざものすごく長い階段だと書いてある。東京の地下鉄の長い階段ってまじで相当長い。ガーディアンが発動しなくてそのまま勅使河原さんが階段から落ちてうちどころ悪く死んでしまったらどうするんだろう。もしくはガーディアンが発動して、力の加減ができなかったまゆまゆに死の制裁が下されたらどうするつもりだったんだろうか。万が一のために原田さんはてっしーの後ろを歩いてで待機と書いてあるけど、階段降りてるときに前を歩いてる人が階段落ちそうになったとして、そんなの止められるだろうか。ガーディアンに確信持てないからこその実験、もっと穏当な方法を選ぶと思うけどなあ。
で、まぁ、そんな難しそうなこと提案されてやっちゃうまゆまゆも謎だけど、やりましたと。その結果、足を少し怪我しました。つまりガーディアンは存在する。「いける」と確信した原田さんは勅使河原さんを殺そうとして、ガーディアンに階段から真っ逆さまに落とされ、狙い通り死亡。
これが勅使河原さん視点からすると、小指がうずくといきなり後ろから原田さんが落ちてきて死亡、原田さんに駆け寄ってから振り返るとまゆまゆが足を怪我して階段に座り込んでいた。小指のうずきは実際はまゆまゆに対してと原田さんに対しての2度あったわけですが、連続して起こったために、勅使河原さんは、発動は1度だったと思ってしまいました。まゆまゆが自分を怪我させようとしたこと自体には気づかず、まゆまゆの怪我は原田さんの怪我に驚いて階段を踏み外したためだと思っているので、発動が1度であることに疑問はなし。「原田さんが自分を殺そうとした、それは何故か」という謎だけが残ったわけです。と。
しかしこれ、原田さんは、まゆまゆの実験の成功をものすごい速さで感知し、その後即座!に勅使河原さんを突き落とそうとした、ということになりますわね。小指のうずきの持続性の問題以前に、勅使河原さんがまゆまゆが座りこむのに気付く前に原田さんが落ちてきたんだもんね。うーん。うーん。ガーディアンの反応速度がめっちゃ早いと思えばいいのかな。なんかイメージとしては、たとえばまゆまゆが足をひっかけようとしたら、出した足が勅使河原さんに引っ掛かる直前に制裁が下る、みたいな感じがするんだけど(空き缶の例でも「空き缶がある程度近くまで来てから」ずれていたので)、もっと、自分の足をちょこーっと動かそうとした瞬間に即座にやりかえされちゃうのかな。そしたら、まあ、勅使河原さんがまゆまゆの行動に気づかなくて、んで原田さんはまゆまゆの表情を見て確信して、よし勅使河原さんを殺すぞって殺意を持って、でガーディアンがこれまた即座に原田さんを殺す、と。いうことで。。。。一応行けるかなぁ。でもなんか痴漢のときもそこまで早くどうのこうのってなかった気がするんだけど。
で、まあ、できるとしてさ、原田さんはなんでそんな間髪いれずに自殺したのかね。別に明日何かがあるから追い詰められて今日中に、とかじゃなかったよね。まゆまゆのこと考えたらそんな目の前で自殺なんてしないと思うんだけどね。まゆまゆのことなんかよりも、「事故死です」って言ってくれる証人が多いときがいいと思ったのかなぁ。それでこんな、みんなで帰ってる最中、なのかな。
うーーーーーーーん。やっぱり原田さんの性格がわからん。相変わらず(というかこれはちょっと前の作品だけど)石持さんのお話って、変なとこだけ理詰めで、妙なとこがおかしい気がするのよね。
後半はとりあえず、円すごーい、って感じ?犯人たちの名前しらない人の視点だからしょうがないけど、なんたらな男がかんたらの男に、って、めんどくさいし。なんか失禁についての言及がしつこいし。
最後の締めはわりと決まって良かったと思います。