シャドウ

シャドウ (創元推理文庫)

シャドウ (創元推理文庫)

割とシンプルな感じの話。
帯によると「向日葵の咲かない夏」の著者が、渾身の力で描いた”救い”の物語」だそうですが…これで救い??相当しんどいよねこれも。そりゃ愛もありますがそれで救われたねって言えるほど軽い傷でもないと思うんだけど。わたしとしてはこれを救いの物語ってまとめるんだったら向日葵のほうが好きです。
道尾さんってあんまり過去を振り返らないような人なのかな。終わりよければすべてよしというような作風の気がする。いや、私はハッピーエンド派ですけど、道尾さんのハッピーエンドって、点としてのハッピーというか…、なんていうのかな、最終的には前向きに進めるような話が好きだけど、前に進むために乗り越えるところをカットされているような…ラットマンのときも、私は、えー、なんかこういろいろともっと思いを馳せるっしょ、いつまでも何年も振り返れ立ち止まれというわけじゃないけど、おのずと考えさせられてしまうようなことがいっぱいあったでしょ、と思うんだけど、さらっと未来に向かっているような感じでもやもやしてしまった。
そして結構性的犯罪の登場が多いような気がするんですが。向日葵もだし、ラットマンもだし、これもだし、これはあやふやですが「光の箱」かなんかもそうじゃなかったかな。それが道具としての登場にしかなれていないような印象が、私にはあって、そこがちょっとひっかかります。