占星術殺人事件

占星術殺人事件 (講談社文庫)

占星術殺人事件 (講談社文庫)

評判よさげなので前から読みたかったわりにいつも忘れてたんですが、たまたま本屋で出会えました。しかし、それは箱に入った、いい感じの装丁のやつだったんで、いやいや普通の文庫でいいぞ、と探したらそちらも置いてあったので、購入。大きい本屋さんでよかった。
なーるほどねー。こういう話でしたか。
御手洗さんと石岡さんの会話が楽しいですね。同人誌とかできちゃいそうだ。
あとは完全にネタバレです
途中の、石岡さんが京都だ大阪だ名古屋だって一生懸命走り回るとこのシーン、いいキャラも出てきてぐわーっと盛り上がったんだけど、全部的外れでした〜ってことなんだよね?なんか、すごい話の作り方だなーと思いました。いやそんな飲み屋の知り合いの誰それさんみたいな脇役の中に犯人はいないでしょうけどさ、ふつーだと、その中に何かしら糸口があって、それを御手洗さんがぐいぐいっと、という展開になりそうなもんだけど。まぁ石岡さんの千円札の話があってこその解決ですが、それ全然、その前の行動と関係ないからな…。日本の真ん中の線の話も別に関係なかったんだけど、それはそれで興味深かったです。
トリックは、まあほんと、昔だからこそ、そして発見順序とか計画したとおりになったからこそうまくいきましたーって感じでしたが、面白かったです。あとからでも「あぁ、あのトリックのやつね!」と思い出せるお話。しかし、ダミーの解答として用意された「みんなで梯子にのぼって、上の方にある窓からロープ4本をベッドにひっかけて、ベッドを吊り上げて、被害者を殺す」という密室トリックの方はちょっとありえんだろーって思いました。足跡うんぬんと睡眠薬の話も、説明できるほど整理してませんが、なんか釈然としない感じもしまして…。


動機は若干弱い気がしましたなぁ。そりゃ実子と差をつけられて辛かったでしょうが、あそこまでやるほどのことかなというと。服はお下がりといってもお金持ちのお嬢さんの服のお下がりなんてふつーに着られるだろうし、よその人は何も知らないといっていたから、擦り切れるほどの襤褸ということでもないんでしょう。まあ自分の自由になるお金がなくてこっそり働いていましたというのは大変だろうけど、それも、食費や学費を全部自分で用意しなければならないということではないんだよね?バレエのレッスンだって一緒に受けていたのだよね。自分がうまく踊ると後でこっそり他の子に別でレッスンつけられていたといっていたけど、自分のほうがうまいんだから別の子が補習でもいいっちゃいいよね。お父さんが死んだあとの旅行にも、お留守番じゃなくて、一緒にいったんだよね。
「10箇所切断して全国に死体を運んだと思われていましたが、実際は5箇所でよくて、死体運びは別の人間を操っていたので、女でも可能です」と言われても、まあ、可能かもしれんけど、5箇所でも十分大変でしょ。まず(別に憎んでいない)父親を殺して、姉を1人殺して、知らない男を連れ込んで弱みを作り、残りの姉妹5人の死体を浴室に運んで切断して包んで物置にしまって、男を操って死体を運搬させる、と。失敗する確率もかなり高いと思うし、ばれたら、敵をとってやりたいと思うほど大事な実のお母さんがどれだけ悲しむことか。ばれたときには自殺するといってもそれはそれでお母さんはますます悲しいでしょう。お母さんだって自殺してしまうかもしれないでしょう。ばれないにしても、お父さんの遺した絵が売れたらそのお金でお母さんの夢を実現すると思っていたらしいですが、娘があんな事件にあって(と思って)、解決もしてないのに、お金入ったわ〜ルンルン、京都行ってお店始めよーってなかなか思えないよね。なんだかなぁ…わからんなぁ。それにお母さんにこんな惨めな生活させるなんて!と憎むなら、まず継母より父親って気がしますが、父親は自分のことを信頼していたからそれほど憎んでいないと。うーん。まぁこういうのは理屈じゃないかもしれないし、異性の親には甘くなりがちなところもあると思うし、同じ女であるのにこの待遇の差!という憎しみなんでしょうけどさ。まぁ、かわいそうな境遇の女の子が追い詰められてやむを得ず犯してしまった罪、というよりは、頭がよくて度胸もある、結構変わってて犯罪の才能のあるすごく美しい女の話って感じでしょうか。
んでもって自分で捏造した父親の手記に、自分の顔は父親の理想の女の顔とか書く彼女、なんだかやっぱりすごい性格なんだなぁ。