「黄昏の百合の骨」 恩田陸

黄昏の百合の骨 (講談社文庫)

黄昏の百合の骨 (講談社文庫)

おもしろいっちゃおもしろいんですが…
恩田さんの本はいわゆる…「萌え〜」見たいなんが出てて、ちょっと…と思うのがあるんですがこれも。
で、色々な本の主人公が実は他の本の登場人物とリンクしていることもよくあるんですが、どうなのかなあ。
なんか作者の自己満足って気がするんだけど。
この本も、主人公水野理瀬の持ってるもっと大きな物語があって(「麦の海に沈む果実」という本があります)
言ってみれば”水野理瀬シリーズ”の一つ、だと思うんですが
この本にそういうことわりは特になかったと思うのです…
で、それがなかったという前提で、ですが、
そうであれば憂理だの黎二だのヨハンだのという
知ったこっちゃない名前をバンバン思わせぶりに出されて
それを理瀬のミステリアスなムード作りに使われても、どうしようもないです。
ここでアマゾンのレビューを見てみました。
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4062123320/250-1952889-0093826
うーん。「麦の…」の続編であるが、この本単体でも楽しめる、と。
まあ、さっきも書いたようになんとなく主人公が只者ではない!て雰囲気だけ味わうには
この本単体でもいいのかもしれませんが、
この本だけ読むことを考えた場合、理瀬の過剰なまでの持ち上げられ方&自意識は特に必要ないように思えるざます。
特に、理瀬の自意識と現実にはギャップがあるような…
結局「あの人」にまんまとはめられたわけだし、
盗聴されてることにも気づかないし、
「あたしとしたことが」とか「あたしは闇の世界の人間」とかいってるのに見合うほどのことを
今回、話の中で、なにかやりましたか?という…
これでは単なる自意識過剰な女の子にも見える。
だったら、そういう裏設定なくしちゃって、普通の理知的な女の子が出会った物語にしたほうがいいと思うし、それで何の問題もないと思う。
闇の側の人間なのに「普通」の世界の男の子に嫉妬したりときめいたりして、ていう
まだまだ不安定なところもあって、そこが、只者ではない理瀬の少女期の魅力でもあったりする、の、かも、しれませんが。
この話だけでなくて「水野理瀬」のことを書きたいのならちゃんとシリーズにすればいいのに。
中途半端だなあと思いました。